2020年5月1日金曜日

健康は千金に値する

 

健康は千金に値する

 中国の唐の時代に書かれた『千金方』という医学書がある。著者は孫思邈(そんしばく)という人で神仙思想も好んだ人である。この『千金方』という書名は「人命は千金よりも尊い」ということから名付けられた。命が千金より尊いのなら、健康は千金に値するとも言える。
 
 健康は失って初めて大切であるということに気づくと言われるが、失う前に気づくに越したことはない。

 著者(私)は青年期に大病を患い、生死の淵をさ迷ったことがある。生来胃腸は弱かったが、臍の上下20センチにわたる手術痕が残る開腹手術を行うと以前と同じようにはいかない。服を着ているし、外からみた動きは他人と同じあるので、大病を患ったことがあるなど他人の目からは分らない。

 しかし他人と比べると体力がないことに気付かされる。他人と同じように働いたり、遊んだりすると、他人よりも疲れやすく、同じように働いたり、遊んだりできない。短時間のことは他人と遜色なくできるが、長時間、長期間に渡ると疲れが溜り、体調を崩しやすい。健康であることの大切さを実感する。

なぜ健康であることが大切か

 私が考える健康であることの利点を二三上げてみたい。
 
 まず健康であるとやりたいこと、できることの幅が広がる。勉強、仕事、遊びにおいて、健康である方が物事を成し遂げるのに有利である。

 私の祖母の兄(大叔父)は九州帝国大学出身の医師であるが、帝大の医学部に入学するには並の勉強では入学できない。受験勉強の時、周りのライバルはバタバタ倒れたが、大叔父は倒れず、最後まで勉強を成し遂げることができたという話を聞いた。写真をみても当時としては身長が180㎝もある大男で、体付きもガッチリしている。

 頭が良いというだけでなく、体力がとても大切であるということを物語っている。健康であれば仕事においてもしっかり働けるので、経済的にも安定しやすい。
 
 次に健康であると運にも恵まれやすいと思える。中国古代医学では気の流れを重視する。病気を治すとき、気の流れが良くなるように治療をおこなう。気の流れが良ければ健康であり、健康であれば気の流れが良い。体の気の流れが良いと周りにも波及するので、運気も良くなる。著者は健康と運は大きく関係すると感じる。
 
 第三に健康であると精神も健全になる。落ち着いて、的確な物事の判断ができるようになる。中国古代医学では内臓の調子と精神、感情の状態には密接な関係があるとしている。例えば、肝の調子が悪くなると怒りっぽくなり、イライラしやすくなる。脾の調子が悪いと思い悩み、思考能力が落ちるという具合である。

 健康であることはただ単に体の苦痛がないというだけにとどまらない。経済的、精神的、人生に大きな影響を与える。では病弱で、体が弱い人を否定するのかという声も上がりそうだが、そういう意味で言っているのでない。健康とは相対的なものである。著者は体が丈夫ではない。しかしより健康であることはできる。より健康であることにベクトルを向けることが大切である。
 

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