2020年7月21日火曜日

金貸さず。役就かず。印鑑(はん)せず。

禁止

さんずの川を渡るな

「あきんどはさんずの川を渡るな」という教えが大阪にはある。この言葉は敬愛する藤本義一先生の「なにわ商人一五〇〇年の知恵 講談社+α文庫」から学んだ。さんずとはこの場合三途の川のことではない。やってはいけない三つのことを表している。「金貸さず。役就かず。印鑑(はん)せず」の三つである。さんずは散ずるにつながり、この三つを破ると財を散ずるということである。

金貸さず

まず金貸さずであるが、金は貸さずにあげるものと思うことである。貸した金はほぼ戻ってこない。金を借りに来るということはお金に困っているので返す当てもない。借金の金利を少し返す程度で、いずれはあなたが金を貸そうと貸さまいと倒産、破産する。金を貸さない方がその人のためにもなる。金をあなたに借りに来るということはあなたを低く見ているということだ。あなたを尊敬している、大切な人と思っているならば金を貸してくれということはない。金を貸さずに今すぐ縁を切るか。金を返してもらえず縁が切れるか。どっちみち縁は切れる。

役就かず

次の役就かずであるが、役に就くとそちらの方の時間を取られて自分の本業に力が入らなくなるということである。役に就くと人づきあいも増え、生活も派手になるきらいがある。しかしその分仕事につながり、出て言った分また帰ってくるという意見もあるであろう。否定はしないが、大阪商人の知恵では役就かずである。人脈と言っても人間が本当に親密に付き合える人は数人が限度であろう。どうしても役に就かなくてはならないこともあるであろうが、自尊心をくすぐるためや、器をこえた役職についてはならない。

印鑑(はん)せず

最後の印鑑(はん)せずは言うまでもなく連帯保証人に間違ってもなってはいけないということである。三つの中でも絶対にしてはいけないことである。どんなにまじめで努力家でも、事業が成功するかどうかなんて分からない。借金するのと変わない。親子、兄弟であっても連帯保証人にはなってはいけない。ひとが良すぎて連帯保証人になって困っている話はたまに聞く。連帯保証人を頼まれたら断る。断ってその人と縁が切れるようならいずれ縁が切れる。金貸さずの場合と同じである。

この「さんず」はよくできた訓戒である。いつでも心にとめておきたい。

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