2020年10月26日月曜日

毫(ごう)鍼を受けるな、刺絡を受けよ。

下手な毫鍼(ごうしん)治療を受けてはいけない」のところで述べたが、毫鍼治療は技術差が激しく、上手な治療家は本当に少ない。上手だと非常に高い効果があるが、上手でない者の治療を受けると、効果がないどころか、悪化することさえある。それに比べると刺絡治療は技術がそれ程難しくなく、効果が高い。上手な治療家を探し、当たるのは本当に難しい。そんな危険と時間の無駄をするなら、刺絡の治療家を探し、受ける方が断然おすすめである。

刺絡治療も鍼治療の一種である。毫鍼治療は柄のついた細い鍼を用いるよく目にするものなのでほとんどの方はイメージが浮かぶかもしれないが、この刺絡治療は知らない方も多いであろう。しかし鍼治療はこの刺絡治療の方が古いのである。刺絡治療に使われる鍼は三稜鍼という、形が全然異なるものである。鍼先が三つ目錐(きり)や韮(にら)葉の形をしており瞬間的に数ミリ程度浅く刺し、滞った血液を出して、血の循環を改善する。

まず技術であるが、瞬間的に浅く刺すだけなので、毫鍼のように技術の上手下手を左右する要素がほとんどないので、技術の差が治療家によりでにくい。基本技術をしっかり学び、無茶苦茶血液を出したりしなければ、治療により具合が悪くなることもない。

数ミリ程度しか刺さないので気胸という肺に鍼を刺してしまったり、神経を損傷する危険ははない。動脈を刺すのではなく、静脈、毛細血管を刺し、少量出血させるだけなので、出血多量になることもない。毫鍼よりもかなり安全な鍼だと言える。また毫鍼のように筋膜にあたった時のズーンという得気もなく、得気が苦手な方にも受けやすい。

ただ基本技術は大切である。注射針でぶっすり刺したりと荒っぽい技術をする者もいるので注意は必要である。日本刺絡学会の基礎講習を受けている治療家、もう少し上手な治療家を選びたいなら日本刺絡学会の認定を受けている治療家、もっとと望むのなら日本刺絡学会の基礎講習会で長年実技講師をしている(していた)治療家を探すと良い。それと同時に全身を丁寧に治療をしてくれることが大切である。

衛生面に気を使っている治療家に受けることも大切である。血液を扱うので血液媒介感染症には注意が必要だ。基本患者さんより治療家の方がリスクが高い。鍼のオートクレーブでの滅菌や吸い玉の洗浄、消毒をきちんとしているかをきちんと確認した方が良い。血液のついた手であちこち触っていないかなどもチェックがいる。血液が着いた手で触るだけで汚染されてしまうからだ。りょうてんは患者さんに肝炎などの血液媒介感染症がないかなどの検査を受けていただいた患者さんに限り治療をしている。

刺絡治療は難病、慢性病の原因である瘀血をとるので効果が高い。「鋒針(三稜鍼)は痼疾の病に使用する」と中国の昔の医学書である『素問』『霊枢』書かれており、慢性病・難病には欠かせない。「怪病は絡に入る」とも書かれており、難病の原因は停滞した血液(瘀血)であるということだ。ガンなどの腫瘍、椎間板へルニア、狭窄症、肝硬変など上げればきりがないが、殆どの難病は瘀血が原因である。心筋梗塞や脳血管疾患などの血管のつまりも瘀血である。捻挫、打ち身、むち打ち、骨折などでも瘀血が生じる。飲み過ぎ食べ過ぎ、特に動物食は瘀血を生む。瘀血と関わりのない方はほとんどない。瘀血をとることは病気を予防するのにも大切な要素である。それが簡単に、効果が高くできるのが刺絡治療である。効果はカッサやカッピング(吸い玉)の比ではない。

刺絡治療は安全で、技術の差が出にくく、効果が高い。それに比べ毫鍼は技術の差が非常に大きい。そのようなことから毫鍼を受けるな、刺絡を受けよと言いたいのである。だから毫鍼治療がいらないというわけはない。鍼灸の3つの治療でも述べたように、病態、体質により使い分けなくてはいけない。しかし技術の差から考えるとこの刺絡治療は一押しの治療である。普段から刺絡治療を受けていると瘀血が解消され、病気の予防にこれほど効果のある治療はない。

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